楽譜が読めてきたら、次は「島倉 学メソッド」のLessonカリキュラムを基に、音程とリズムの正しい取り方を教授致します。
練習曲の課題は全て、必ず下記の指示に従って自主練習をして下さい。
・ピアノの音で音程を確認すること
・拍子に合わせてリズムカウント(プリカウント)を入れること
・テンポはModerato(♩=76~96)の速度に合わせたメトロノームを使用すること
・1番最後の音は次の頭拍までしっかり伸ばし切ること
・音程は息で上から音を掴み取ること
コールユーブンゲンは、基本的に「ア・カペラ(無伴奏合唱)」様式です。全く音感力がない生徒の場合、自力で音程を取ることはできないので、初めはピアノを使って練習して下さい。楽譜通り1音1音丁寧に鍵盤を叩き、聴こえる音に合わせて声を出す。これを何度も繰り返します。その時に、くれぐれも注意して頂きたいのは、耳で自分の声を聴きながら音程を確認してしまう行為です。例えば、よく手のひらを耳に当てて自分の声を聴いている人がいますが、聴覚が鈍くなるので絶対に辞めて頂きたい。
人間の聴覚は、空気伝導によって外から聞こえる音を外耳で感知し、骨伝導によって中から聞こえる音を内耳で感知しています。私たちは、この両方の音を同時に聴いています。
外耳で感知する音が実際の音高なのに対し、内耳で感知する音は外耳よりも音高が高く聞こえるため、内耳だけに頼ると実際に出している声の音高が低くなります。また、自分の声を聴く行為は、息の流れが止まるので、声が解放されず喉声になります。音感に慣れるまで自分の声を聴くのではなく、「ピアノの音」を聴いて音程を確認して下さい。自主練習の時に、正しく音程とリズムが取れているかを客観的に確認したい場合は、録音した音源を聴いて確認して下さい。
正しくリズムを取るためには、カウントがなければ始まりません。歌い出す前に、きちんと各練習曲の拍子に合わせて「リズムカウント(プリカウント)」を入れて下さい。例えば、2拍子ならば2カウント、4拍子ならば4カウントです。また、歌っている最中にテンポが早くなったり遅くなったりしないように、Moderato(♩=76~96)の速度に合わせた「メトロノーム」を使用して下さい。
音楽は「時間芸術」ですから、音符の拍数にも十分気を付けなければならない。特に、途中に休符がある小節は音が短くなりやすい。最終小節(終止符)における1番最後の音は、「次の頭拍までしっかり伸ばし切る」ということを忘れないで下さい。また、休符で終わるような場合は、音がないからと言って決して無視をしない。休符も音楽ですから、必ず最後までカウントを取ってから終えて下さい。
音程を取る時は、息で上から音を掴み取って下さい。「上から音を掴み取る」と書いて「音取る(ねとる)」です。日本人の資質は、元から開口が狭く喉声が特徴なので、音高が下がりやすい。だから、舞台に適応する開口・発声を意識し、息を上に向かって当てることで音が落ちないように、「正しい癖」を付ける必要があるのです。
練習曲は開口・発声を意識して機械的に読譜(歌唱)すること
音程とリズムの正しい取り方を習得できたら、最後は読譜(歌唱)の訓練法です。
練習曲の課題は全て、舞台に適応する開口・発声で機械的に読譜(歌唱)して下さい。この「機械的」というのが重要です。初めは、音程とリズムを取ることに意識が集中し過ぎて、開口・発声が乱れてしまうでしょう。また、開口・発声に意識が集中し過ぎても、音程とリズムが乱れてしまいます。
「開口・発声」と「読譜(歌唱)」は1セットです。必ず両者が連動するように、初めは意識しながら大袈裟に練習し、無意識化されるまで何度も反復練習しなければなりません。なぜなら、それを基礎として「正しい癖」にしなければ、楽曲を歌唱する時に全てが崩れてしまうからです。「崩れ」を歌唱表現だと勘違いしてしまう歌手(俳優)は、「三流」です。「一流」は、決して基礎が崩れることはない。
ちなみに、よくコールユーブンゲンを音楽的に歌うよう指導する講師を見かけますが、それはコンセプト(概念)から逸脱しています。そもそも、何を根拠に「音楽的」なのか分かりづらい曖昧な概念は、基礎が崩れる要因にしかならない。あくまでもコールユーブンゲンは、先にも述べたように「譜面の指示に従い一定の旋律を正確な音程とリズムで歌うこと」です。ここでは、「歌唱表現」など一切必要ありません。それは、「コンコーネ50番」でしっかりと学んで下さい。