演技の表現法「量子力学」

この講義では、私が「量子力学」とは演技の本質と同じであると提唱する訳を真理(宇宙の道理)に基づき教授致します。

まず初めに、物理学には古典力学(目に見える世界)と量子力学(目に見えない世界)があります。
後者の見えない世界を科学で解明していく学問が量子力学です。
人間は、科学的根拠がないものを信じようとはしない。それが「スピリチュアル」の世界です。

「思考は現実化する」
「意識は具現化する」

これらは、科学における量子力学を無理矢理スピリチュアル的に解釈しようとした言葉です。なぜなら、人間はスピリチュアルよりも科学の方を信じるからです。しかし、この先も「宇宙の真理」を科学的に解明することはできないでしょう。自分自身を超えた者だけが「神の領域」の境地を知ることができるのです。
量子力学の世界では、理論物理学者のアルベルト・アインシュタイン氏が宇宙に存在する全てのものは「粒子」と「波動」のエネルギーであると提唱しました。これは、エネルギーあるものは物質に変換し、物質はエネルギーに変換することを意味しています。

粒子=目に見える世界(質量)
波動=目に見えない世界(周波数)

例えば、目に見える世界は肉体や物質的なものであり、目に見えない世界は心や精神的なものです。
実は、この宇宙において我々の目に見える物質は、たったの5%しかありません。そして、残りの95%が目に見えない物質とエネルギーです。つまり、人はたった5%の事実のために、95%のあるべき真実を見ないまま生きているのです。

「事実は真実の敵なり」

これは、ミュージカル「ラ・マンチャの男」で有名な言葉ですが、まさにそのことを言っているのです。

信じられないと思う方は、貴方の目の前にある物を紙で隠してみて下さい。例え見えなくとも確かに物は存在していることに気が付くはずです。演劇というのは、その隠れて見えない物=真実を伝えようとするための芸術です。
皆さんが舞台を観ている時に心が震え、感動して涙するのは何故なのか。それは、5%の目に見える物質を通して、95%の目に見えない物質とエネルギーの影響によって真実を知ることができたからです。。

1807年に物理学の二重スリット実験で、電子は「観察」によって振る舞いを変えることが分かりました。「全く同じ条件」で実験をおこなったにも関らず、誰も観察していないところでは「波動」として意図しない方向へ動き、誰かが観察することで「粒子」として意図した方向へ動くことが確認されました。つまり、「観察した瞬間、確率的に結果が決まる」とする解釈です。
この実験結果に対して、アインシュタイン氏は「隠れた変数理論」を提唱しました。常識を信じない彼は、真実に辿り着いていないだけ。現在の人間の技術では測ることができない物理量が存在し、それが影響して実験結果が異なったと批判したのです。

これは、私の主観でお話し致します。
アインシュタイン氏は、実験結果を批判したのではなく、確率論ではないことを批判したのです。つまり、人が心の影響によって感動するように、電子も同じく95%の目に見えない物質とエネルギーの影響によって波動が共鳴し現実は変化する。しかし、それは人間のレベルでは到底理解できない、科学では解明できない境地だと彼は分かっていた。
この世に偶然(確率論)はなく必然(神の領域)であると信じていた彼は、神が適当にサイの目を出すことはしない。「神はサイコロを振らない」と言ったのです。

それでは、ここから本題へと入ります。
先にも述べた宇宙の構成(物理学)を意識の構成(心理学)に置き換えると、5%が「顕在意識」、95%が「潜在意識(無意識領域)」で表すことができます。
顕在意識とは、人間が物事を考えたり決断したり自覚できる意識です。
潜在意識とは、第六感(才能)と呼ばれる普段眠っている意識です。それが目覚めることによって自己超越した無意識領域のことを集合無意識とも言います。

スピリチュアルの世界で「思考を現実化する」とは、後者の潜在意識を書き換えることを意味します。そのためには、「思考」「言葉」「行動」が一致することであると説いています。つまり、思考のエネルギーを明確に言語化し、言葉の力によって波動を粒子へと変換し、意志に伴って行動しなければならない。
それは、演技の表現法においても同じことが言えます。俳優が舞台の上で役柄の人生をリアルに生きるためには、表現手段である「想像力」「言葉(作家の祈り)」「アクション(行動)」それぞれのベクトルをきちんと統合することです。つまり、想像力を使って見えない世界をあるかのように創造し、作者が意図する言葉の裏に隠れた想念を真実のように語り、意志に伴って行動しなければならない。

我々人間の身体は、原子の集合体でできています。
原子は、原子同士で結合して新たな性質の分子を形成しようとします。人間も原子が波動となり、同じ波長のもの同士が共鳴し合うことで現実が引き寄せられるのです。それを「引き寄せの法則」と言います。
実は、この「引き寄せの法則」は、商業を目的として人間社会にばら撒かれた「洗脳」という名の罠です。自分の弱さを認められない者が安易にそれを知識のみで解釈すると、自分は何もせず他者ばかり引き寄せようとする欲深い傲慢な人間になります。その結果、悪いものしか引き寄せない。その上、自分の思い通りにならない原因を全て他者のせいにしてしまう。なぜなら、撒き餌にまんまと引っかかり洗脳されているからです。

ちなみに、私は劇団の研究生たちに歌唱・演技指導をする際に、「何故やらないのか」と注意は致しますが、「何故できないのか」とは絶対に責めたりは致しません。なぜなら、生徒自身の意識や能力を私が変えることは不可能だからです。私がやらなければならないのは、自分本位ではなく相手本位になって私自身の意識と能力を変えること。つまり、生徒が自分の意識と能力で不可能を可能にできるように、私が柔軟に生徒個人の資質や気質に合わせて指導をすること。それが、プロフェッショナルのコーチング技術です。

「引き寄せの法則」に洗脳されないためには、知識だけではなく「哲学」で解釈しなければなりません。知識をたくさん詰め込むことが哲学だと思っていたら大間違いです。哲学とは、他者から植え付けられて得た固定観念や常識を捨て、真理に基づき判断する力を身に付けるための学問です。
己の意志の弱さを克服できない者が、いくら現実を変えようとしても決して変わりません。つまり、今ある現実としっかり向き合い、そこから決して逃げないこと。そして、自分の責任において判断し行動すること。何においても人生を開拓するためには、目的へと向かう行動力が必要なのです。それが「引き寄せの法則」の本質です。

人の行動力は、95%の潜在意識によって支配されています。他者から植え付けられて得た固定観念や常識に捉われている人は、無意識に自分の行動にブレーキをかけてしまうため、決断力のある行動ができません。つまり、潜在意識を書き換えられないということは、行動力には結び付かないので現実化することはできない。
それは、役者も全く同じです。舞台の上で決断力のある行動を導き出せるようにするには、95%の潜在意識によって常に想像力を養っていかなければならない。

俳優や歌手は「想像力」によって無から有を生み出し、「言葉の力」によって更に物事を具現化し、「行動力」によって役柄や楽曲を現実化させることが仕事です。それが真実となって観客の心へ伝わり波長が共鳴し合った時、観客の心に「感動」が宿り自分のもとへ「幸せ」となって返ってくる。つまり、演技の表現法とは「量子力学」そのものなのです。



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