「演技は習うものではない」「個性がなくなる」と言っている俳優をよく見かけますが、基本を身に付けずして個性は絶対に生まれません。
「スタニスラフスキー・システム」とは、集中力を妨げる余計な煩悩を捨て、心を開放することによって、本当の自分(真我=アートマン)を知り自己超越することです。それを体得すると、奥深くに眠っていた潜在意識(第六感)が目覚め、今まで全く気付けなかったことに気付いたり、新しい発想が次から次へと生まれてきます。即ち、それが自分の個性になっていくのです。
「スタニスラフスキー・システム」の最終目的は、内面的行動(心理)と外面的行動(身体)を統合した「身体的行動の方法」の本質を体得した上で、想像力によって創造した物語の世界に自分が「居る(そこに存在する)」と認識する=本当の自分(真我=アートマン)を知ること。そして、自我を忘れず自己超越する=自我意識(自意識)を確立することによって、役に飲まれることなく「自分として役を生きる」ことなのです。
「本物の演技法を体得したい」と思っている方には、決して避けられない登竜門であることを覚悟して頂きたい。
備考
2017年、島倉 学 監修による「スタニスラフスキー・システム」の演技理論を講義した内容です。
2023年に、内容の修正と補足を加えました。
ちなみに、演技トレーナーがよく指導する時に使う「真実の言葉」を伝えること。そんなものは存在しません。なぜなら、言葉とは不完全なものだからです。不完全なものに、「真実の言葉」など初めから存在しない。
役者は、作者(作家)が意図する不完全な言葉(台詞)を深く掘り下げ、それを真実かのように語ることです。つまり、役者は言葉自体が持つ真意をきちんと理解した上で、真実を導き出して伝えることが俳優の役目だという意味です。
だから、私はそのニュアンスを持たせるために、敢えて「言葉の真実」と表現致しました。
ここまで申し上げれば、いかに「言葉」は重みがあり、軽視できないことをご理解頂けると思います。
島倉 学